歩行・走行時の腕振りと体幹回旋の解釈は?

歩く時に手足を交互に出すのは当たり前?

以前、インターネット上で『日本人古来の歩き方(ナンバ歩き)が西洋式に矯正されたのはGHQの日本弱体化計画の一環かもしれない』という旨の記事を目にしました。

(書いた方は歩行の専門家ではないので、紹介は避けます)

 

理学療法士が歩行を評価する際に基準とする”いわゆる”正常歩行は西洋医学に基づいたもので、また、靴について学んだ『西村シューフィットメソッドマスタースクール』でも、西洋式の歩行分析を行っています。

ナンバ歩きに関しては、スクール内で話題に上ることはありましたが、詳しいことは分からないので、一応調べてみました。

【ナンバ歩きとは】

  • 同じ側の手と足を一緒に動かす歩行
  • 腕をあまり振らず、体幹も回旋させない
  • 歩幅が小さい,すり足,前足部接地
     ⇒踵接地がなく、ほぼ足部剛性のみで(足部をバネのように使って)前進
  • 語源は諸説あるが、『難場』(難儀な場所でも疲れにくい)が多い印象

 

現在の日本でナンバ歩きが行われなくなった時期や理由には諸説あり(GHQの関与の有無も不明)、そもそも記録がほとんど無いので、江戸時代以前の日本でナンバ歩きが一般的だったという説に厳密な確証はなく、逆に完全に否定できるほどの確実な理論もないそうです。

私は理学療法士なので西洋式の動作分析を行いますが、ナンバ歩きと西洋式の歩行と、どちらかが絶対的に正しいとか、間違っているとか、議論すること自体は無駄だと思っています。

改めて見ると、力学的な効率は、ナンバ歩きの方が良いのかもしれませんし…西洋式歩行にも、解明されていないことがたくさんありますから。(詳しくは次項にて)

 

生きていくためには刻々と変化する状況や環境に適応していかなければなりません。歩行に限らず、人間の動作には(そして考え方にも)ある程度バリエーションが必要です。少しでも楽で身体を傷めにくい動作を取り入れて安全に生活できれば、それで良いのではないでしょうか。

ナンバを基本とする身体の使い方は、伝統芸能や古武術,陸上競技などに一定程度応用され、スポーツ科学の観点からも研究が行われているそうですよ。

 

 

西洋式の歩行は効率が良い?悪い?

西洋式の歩行は手足を互い違いに動かすので、一見、力が打ち消し合って効率が悪い印象があるかもしれません。

そもそも、人類進化の過程で二足歩行を行うようになったのは、手で獲物を持って運んだり、道具を使って作業したりするためだと言われています。日常生活では、歩行と手の動きをそれぞれ独立させる必要があるので、必ずしも腕振りをしなくても良い仕組みになっています。(2020/10/12のブログ記事参照)

もちろん、全く振らなくて良いということではありません。腕を振ると体幹の上部と下部とが逆回旋して歩行中のバランスを保ちやすくなると言われており、速歩や走行ではこれが重要になってきます。

手足を互い違いに動かすこと自体は、生理的な反射を利用した無意識で行う運動なので疲れにくいとされています。

また、近年は、腕振りが能動的に(意識して)起こるのか、体幹運動から受動的に(無意識に)生じるのかが、議論されているそうです。(私は、受動がメインで僅かに能動だと思います)

 

歩行時の骨盤帯と肩甲帯との相互関係について、今回探した文献のうちの一つをご紹介します。

歩行と走行の移動速度変化における骨盤と体幹回旋運動の相互相関分析
(『理学療法学』第33巻第6号 P318~323,2006年)

【秒速1.3m(=時速4.68km)の歩行】

  • 骨盤と体幹(=肩甲帯)の回旋運動は逆位相に近かった
      ⇒体幹内部の角運動量を打ち消し合ってバランスが崩れないようにしている
  • ただし、振幅は骨盤>肩甲帯
      ⇒上肢を前方に振る勢いとタイミング(裏付けはまだだが、経験則では骨盤前方回旋とほぼ同時)を考慮すると、前方推進力が完全
    に打ち消し合うことは無いのでは?※1   

【秒速1.9m(=時速6.84㎞)の速歩】※2

  • 0.45秒~0.5秒の間は、肩甲帯と骨盤帯がほぼ同じ動き方をしている※1
  • 0.5秒~0.6秒の間は肩甲帯の内旋(=前方回旋)も微増~キープ
    外旋方向には切り替わっていない※1

【走行時の骨盤回旋運動の変化】

  • 移動速度の増加に伴い、骨盤の動き方が体幹のそれに近づいていった
    (肩甲帯→骨盤の順で動き、若干のタイムラグあり)
  • 走行では、骨盤と体幹が同方向への運動となり、体幹回旋はほとんど生じない
    (体幹の剛性を高めて力を効率よく伝えるため)
  • 骨盤と肩甲帯では、回旋最終域への到達時間に0.1秒程度のズレあり
     ⇒体幹が少し回旋している(衝撃を和らげる”遊び”の部分では?
    ※1

※1:田村の解釈です(詳細は文献をご覧になって判断してください)
※2:時速6~7㎞でのウォーキングは、ランニングになるギリギリ手前のスピードで、同じ速度のランニングよりも脚への負担を軽減しつつ高負荷な運動となり、脂肪燃焼効果も高いと言われています。

 

 

余談:エビデンスの存在意義って何だろう?

今年度、私が本業で努めている老人保健施設では、例年と比較してかなり多くの入所者様がお亡くなりになりました。

でも、それがなぜなのか、深く追及されることはありません。

 

『高齢者だから、身体にいつ何が起こっても不思議ではない』

『この冬は寒かったから、体調を崩す方が多かった』

 

確かに、それもあると思います。施設入所者様は何らかの基礎疾患を持っている方ばかりですし、特別養護老人ホームへの入所を待っている間に寝たきりになってしまった方も多いです。

でも、今に始まったことではありませんし、それだけでは、多くの方が同時に体調を崩したことに対する説明がつきません。

 

私の解釈にもバイアスがかかっていることは否めませんが…

 

商品を売りたいとか、自分の正しさを証明したいとか…

そんな都合の良いときにだけ、エビデンスを持ち出して

不都合な真実は見て見ぬふりをして、非科学的な理由を付けて闇に葬るのであれば

エビデンス自体の存在意義が危ぶまれると、私は思います。

 

それでも、学びは続けますけどね。

 

 

サービスのご案内

良い靴が、素敵な明日へ運んでくれる。

3万人の足をみてきたママさん理学療法士が、足元のおしゃれと健康の両立を本気で応援します!

社会医療法人所属の身で金銭授受を行えないため無料です。
(対面サービスでは、材料費のみいただきます)

本業が平日勤務のため、基本的に土・日・祝日の昼間(1時間程度)となります。
お問い合わせフォームにて、ご予約を承ります。
どうぞお気軽にお申し付けください。

 

対面サービス

コロナウイルス感染拡大防止の観点から、山口県内の方に限らせていただきます。ご了承ください。

Happy Medium(自宅サロン;山口県下松市)までお越しいただける方

 

ZOOM個別相談

オンラインでの相談・指導となります。

基本的に土・日・祝日の昼間(1時間程度)ですが、夜間をご希望の方は、お問い合わせフォームにてお知らせくださいませ。

 

無料メールマガジン

ママさん理学療法士が教えます!あなたの靴に魔法をかける方法

ママさん理学療法士が教えます!靴の正しい選び方

 

お問い合わせ

お問い合わせフォーム

Facebookページ

 

メールやMessengerでのご相談も、随時受付けております。   どうぞ、よろしくお願いいたします。

靴と歩行の調律家 田村智津子

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。